新リア王 高村薫 | つながい

新リア王 高村薫

高村 薫
新リア王 上
高村 薫
新リア王 下

上下巻。



保守王国の崩壊を予見した壮大な政治小説、3年の歳月をかけてここに誕生!
父と子。その間に立ちはだかる壁はかくも高く険しいものなのか――。近代日本の「終わりの始まり」が露見した永田町と、周回遅れで核がらみの地域振興に手を出した青森。政治一家・福澤王国の内部で起こった造反劇は、雪降りしきる最果ての庵で、父から息子へと静かに、しかし決然と語り出される。『晴子情歌』に続く大作長編小説。(アマゾンより)


日経新聞で、「愛ルケ」の前に連載していた小説。「愛ルケ」とは比較にならない重厚かつ文学的な香り漂う力作。

青森と永田町、政治と仏教の世界という一見正反対にあるものを取り上げ、両方を描くことで近代日本を救い上げているように感じる。


高村女史のすごいところは、読んでいるうちに匂いを感じさせるところだと思う。

本作では作中、ずっとお香の香りが漂っているし、最後の回想シーンでの整髪料の匂いは、かいだことはないが実感として今も自分の鼻に残っている気がするほどだ。


決して読み易いストーリーでも文体でもないが、謎の解かれ方、思考の発展の仕方は読み手をひきつけて離さない。エンディングも見事だと思う。


作者のインタビューによれば、これは3部作の2作目であり、3作目は2000年頃の日本が舞台になるという。今から、非常に楽しみである。