宮沢章夫 資本論も読む | つながい

宮沢章夫 資本論も読む

宮沢 章夫
『資本論』も読む

この人のエッセイや小説・戯曲は好きで前から読んでいたのだが、この本には驚いた。


前書きで、この本を書く動機として、「高校時代に読破しようとして手にとったのだが、文庫本の1冊目の途中(商品)で挫折した」とあり、それがまったく自分にもまったく同じように当てはまったのだった。


当時、自分もなんとなく「資本論くらい読まなきゃ駄目だよな」という考えにとらわれ、全9巻読破を試みたのだった。しかし、何の予備知識もなく、疑問を聞ける相手もおらず、志のない高校生には、商品までが精一杯だった。


これを読みながら、一部高校時代に戻った自分がおり、また違う視点から資本論を眺めることのできる自分も確かにおり、形容しがたい懐かしさにとらわれてしまった。


本の内容は、資本論の解説書ではなく、一行一行をひたすら熟読・熟考し、その意味を考えていくというもの。この本を読むと、「本を読む」ことの面白さが手に取るように伝わってくる。忙しくても、眠れずに本を読んでしまう気持ちが、そのまま表現されているのだ。


資本論自体に興味がなくても、あっても、読む価値のある本。